K君のビラーゴ【サビーゴ】(昔の話)

かなりイジれるようになっていた私達は、初めてレストアをする事になりました。
その単車はヤマハのビラーゴ250。
K君が近所の団地の自転車置き場に何年も放置されたものを貰ったのです。

サビのかたまりやん。サビーゴやん。ってその単車の名前はサビーゴになりました。

それから毎晩毎晩大人数でレストア。
みんなでサビとくすみをシュリシュリ紙やすりで。
学校の授業中もクラスのみんなにパーツと紙やすりを渡して、授業中に鳴り響くシュリシュリ音。

タンクとキャブはガソリンキャラメル状態。激臭を放っていました。
K君の家のお風呂で、タンクに花咲かG入れて本気でフリフリフリフリ。
その時のK君の笑顔は一切けがれのないものでした。

「3時が一番寒いなぁ」とか言いながら、冬の夜に毎日朝までやって。
エアコンプレッサーなんてあるわけない私達は、メインジェットやスロージェットはクリーナに漬けて口でフッ!
その味は今でも鮮明に。

そしてパーツも組み上がり、いよいよ最終段階。
カサカサのピストンにプラグホールから少量のオイルを垂らして
押し掛けや!!

K君が跨って、みんなで「行けーーー!!!」って押し放って

ブルン。ブルルン!ブーーン。ブーーーン』煙を吐きながらノーマルマフラーのしょぼい音を立てて、彼は冬の夜の街に解き放たれました。小鳥のように。
小さくなっていく彼を見ていた私達の笑顔は、キモイ程の満面の笑みでした。